み篶刈る信濃の空に(波里美知会歌)
一.はりみち墾道を行きし旅人 あくがれてここに来たるか
み篶刈る信濃の空に 我らまた若き夢見し
二.黒雲を払え青嵐 わが心洗え清流
世故の才しばしも捨てて いざ行かむ流離果てなく
三.渓谷に無心な岩魚 尾根風に揺れる駒草
この巒気何の名利ぞ 君憩え心ゆくまで
四.残月の窓辺に寄りて いざ友よ語り明かさむ
円居して美酒尽くるまで 青春賦歌い明かさむ
五.麗しき山河の恵み 友どちの厚き情けと
豊かにも心満たして 現世にいざ帰らばや
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「み篶刈る信濃の空に」の現代語訳 |
1. |
切り開いたばかりの道を行った(昔の)旅人は,何かに魅せられるようにしてここに来たのか,(その)信濃の空に我々もまた(古人と同じように)若い夢を託したものだったっけ。 |
2. |
青嵐よ(この世を覆う)黒雲を吹き払ってくれ,清流よ(疲れ汚れた)私の心を洗い清めてくれ,こざかしい世渡りの知恵はせめて暫くの間は捨てて,さあ出かけよういつまでも続くさすらいの旅へ。 |
3. |
渓流に行けば岩魚が無心に泳ぎ,尾根道を行けば可憐な駒草が風に揺れているではないか,この巒気(山中特有の冷気)に比べたら名声や利益に一体どれほどの価値が有るというのだ,君よ(今は名声や利益など忘れてこの雰囲気を)十分に楽しみ給え |
4. |
残月の光が差し込む窓辺で,さあ友よ夜明けまで語り明かそう,(生気にあふれた)青春時代の歌を,美酒が無くなるまで皆で歌い明かそう。 |
5. |
美しい山河の恵みや友人達の厚情などで心を豊かに満たし,(その心で,濁世を生き抜くべく)さあ,現実の世間に帰って行こう。 |
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